紅月さんの創作場

バドミントン小説「FlyUp!」完結済。次回作開始時期は未定。
超長編を毎日ちまちまと書いていく創作日記です。

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2014.08.27 Wednesday
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    その1823

    2012.06.21 Thursday 21:34
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       青森山城が女子の有力選手を集めるならば、当然、君長や有宮も候補に入っているだろう。一緒にスカウトを受けた時の感触としては、早坂はバドミントン越境入学には肯定的のようだった。特に何もなければ入るだろう。そして、君長凛も入れば、北海道の一位と二位が同じチームとなる。それをコートの向かいから見ている自分しか姫川にはイメージできなかった。

      「こうして一緒のチームで試合できてとてもよかったけど。やっぱり私達ってライバルだなって思った。同じチームで応援するのは物足りないよ。相手側に立って、戦いたい」
      「姫川は、熱血してるね」
      「そんなスポーツに熱心で好きな男子とかいないの?」
      「今はいないよ。でも、恋愛を犠牲にする気はないかな」

       一度言葉を切ってから、言う。バドミントンも好き。友達との会話も好き。好きな人との会話も好き。好きだった人への思いに蟠りはなく、新しい出会いを捜すだけ。だからこそ、スカウトは断ったのだから。

      「だから、女子校は断ったでしょ?」

       清水と藤田は動きを止めてから笑い出す。つられて姫川も爆発するように笑った。夜中ということは歯止めにならず、三人はしばらく笑い続けていた。

       * * *

       公園のベンチで相手が来るのを待っている間、小島はいつになく緊張していた。試合でも今の自分の状況になることはないだろうとはっきり分かる。冷静になろうと頭の中で羊が何匹も柵を越えている光景を思い浮かべていたが、全く効果はなかった。
       砂を踏みしめる音がして小島は大きく体を震わせた後に固まった。ゆっくりと近づいてくる足音。そして、斜め下を見ている目線に入ってくるつま先。ゆっくりと顔を上げると、早坂が立っていた。ジャージの上にジャンバーを着た姿。全国に乗り込んだ面々は皆、荷物に余裕がないため行きと帰り分くらいしか私服は持っていきていない。早坂も荷物は最小限で試合に集中するためにきたのだろうと思うと苦笑した。

      「すまんな。疲れてるところ呼び出して」
      「こっちもごめん。うたた寝しちゃって起きたら時間ぎりぎりだった」

       言われてから腕時計を見ると待ち合わせの時刻を五分過ぎていた。全く気にする必要はない。今日、一番疲れたのは有宮と戦い、西村坂本組を相手に優勝を勝ち取った早坂だろうから。

      (俺は……負けちまったからな)

       自分の敗戦が蘇る。決勝まで温存されたのを除いてずっと勝ってきたのは、全て浅川に勝つためだった。だが、それらの積み重ねも虚しく破れてしまい、後に託すしかなかった。いつも託される側だっただけに、慣れない精神状態で疲弊した小島は武と早坂の試合になってようやく本調子になり、応援できたのだ。

      「まあ、座れよ」
      「うん」

       隣に座る早坂からふわりと良い香りがする。髪の毛は試合の時とは異なり結んでおらず、背中に流している。普段と雰囲気が異なる早坂に小島の心臓は徐々に心音を高めていく。

      (やばい……なにもかんがえられない……)

       言おうとしていたことはシンプルだ。しかし、その言葉を口にする自分が混乱し、震えて上手くしゃべれない。何度もつばを飲み込み、息を吸っても体は固くなり、喉は渇いた。

      「今日は、お疲れさま」
      「お、あ、お、おう」
      FlyUp! | - | - | - | - |

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      2014.08.27 Wednesday 21:34
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