紅月さんの創作場

バドミントン小説「FlyUp!」完結済。次回作開始時期は未定。
超長編を毎日ちまちまと書いていく創作日記です。

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2014.08.27 Wednesday
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    その1826

    2012.06.22 Friday 21:53
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       時は少しだけ流れ、四月の第一週。
       浅葉中の体育館は閉め切られていても、扉一枚隔てた先からは豪快なシャトルを打つ音と咆哮が響いていた。

      「らあっ!」

       渾身の力を込めて吼えた武がスマッシュを解き放つ。ジャンプで高みから打ちおろしたシャトルは相手の前方に突き刺さり羽を撒き散らして吹き飛ぶ。打ち込まれたほうは口笛を吹いてラケットで拾い上げると変わりのシャトルを要求した。審判として立っていた橋本が新しいシャトルを筒から出して、サーブ位置に立っている吉田へと放る。吉田は受け取ってすぐにサーブ体勢を取り、武は後ろで腰を落としてプッシュに備えた。ネット前の向かい側にいる相手には容赦はしない。スコア的には勝っていても、油断すれば負けるということを言い聞かせて。

      (そうだ。俺も吉田も。誰が来ても負けない)


       吉田がサーブを打つと相手――金田が綺麗にプッシュを放つ。しかしその軌道は武にとっては十分取れる場所。むしろ一瞬早く移動したため絶好のタイミングでドライブを打ち返した。ラケットを伸ばせば届く距離だったが、金田は触ることが出来ず、後方にいた笠井も何とか触れた程度でネット前に上がった。
       チャンスに飛びついたのは、今度は吉田だ。

      「うぉおおあああ!」

       気合いのこもった声と共にラケットを振り下ろし、吉田ははシャトルを叩きつける。金田も一歩も動くことが出来ずにシャトルを見送るしかなく、橋本は最後の点数を告げた。

      「ポイント。フィフティーンワン(15対1)。マッチウォンバイ、相沢吉田」
      『ありがとうございました!』

       四人とも勢いよく挨拶を交わしてコートから出る。金田は一足早くコートから出てラケットバッグの上に置いてあったタオルを取ると顔を力任せに拭いて汗をぬぐい去る。しばらくして顔をあげてから息を思い切り吐くと唸るように言った。

      「うおあああー。八ゲームやって結局五点しかとれなかったか」
      「やっぱりブランクは厳しいな」
      「ブランクだけじゃねぇ。こいつらがけた外れに強くなったからだよ」

       金田の言葉に吉田と武は恐縮し、向かい合ってかすかに笑う程度だった。四月に入っていよいよ終わりを迎える一週間の間、卒業した金田と笠井がずっと練習をしにていた。高校に入学が決まるまでは受験勉強もありランニングをする程度にしていたが、合格してから高校の練習についていくうえで勘を取り戻しておきたいと部活に顔を出してきた。ちょうど、全国大会から戻った武と吉田が標的になり、二人の練習相手となったのだ。
       五日間で八ゲーム。武と吉田が取られた点数は五点だけ。圧倒的な力の差を先輩に見せつけたことになる。
      FlyUp! | - | - | - | - |

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      2014.08.27 Wednesday 21:53
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